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前田記念腎研究所

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学術活動
2017年

透析排液熱回収装置と透析用監視装置用熱交換器の併用を想定した節電効果の検討

  • 日付
    2017/05/21
  • 学会・研究会
    第27回日本臨床工学会
  • 発表者
    鳥谷部康喜
  • 所属
    大原

目的

当院では、透析排液及び水処理装置排水を回収し、熱交換器を使用した水処理装置原水加温システム(W熱交換)を2012年より導入している。また、同系列の茂原クリニックでは、透析用監視装置(コンソール)への熱交換器を装着した透析液加温システム(S熱交換)を全台へ導入している。両者の熱交換システムは、各装置におけるヒーター消費電力を軽減し、大幅な節電効果があることを過去の本会において報告しており、実際にW熱交換で年間70万円、S熱交換で年間30万円に相当する節電効果があった。今回、両者の熱交換システムの併用は、節電対策として有用なものであるか、検討したので報告する。

方法

当院における熱交換システムを、①導入なし、②S熱交換のみ導入、③W熱交換のみ導入、④S熱交換、W熱交換の併用導入、の4場面を想定。

各想定で、1クールあたりに水処理装置、多人数用透析液供給装置、A、B溶解装置、コンソールのヒーターで使用される消費電力を、各月毎に試算し比較を行った。

結果

事前調査において、原水温が最低値である2月のシミュレーションは、①200.0kWh、②180.4kWh、③131.6kWh、④125.6kWhであり、年間を通した平均値は、①156.7kWh、②137.0kWh、③112.9kWh、④105.2kWhであった。

考察

S熱交換のみ導入では19万円/年、W熱交換のみ導入では42万円/年、S熱交換、W熱交換の併用導入では49万円/年の節電効果があり、両者の併用導入が最大値を示した。

しかし、両者の併用導入は、S熱交換のみ導入とW熱交換のみ導入で得られる節電効果を単純に加算したものにはならなかった。熱交換器の効率は、供給液温度と排液温度に大きく依存しており、両者の併用では、透析排液の熱は、まずS熱交換を通過後、W熱交換を通過する形となるため、W熱交換の効率が若干低下すると考えられる。

当院でのW熱交換を導入する際、熱交換器の効率が良かったことや配管内の温度ロスが少なかったことから、試算よりも大きな節電効果がでたため、両者の併用導入においても実際には試算以上の節電効果が出る可能性がある。

結語

W熱交換とS熱交換の併用は、透析排液の熱を最大限に利用できるシステムであり、大きな節電効果が期待できる。

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