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前田記念腎研究所

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学術活動
2014年

臨床工学技士による濃度管理業務と責務

  • 日付
    2014/06/13
  • 学会・研究会
    第59回 日本透析医学会
  • 発表者
    江村宗郎
  • 所属
    茂原

透析療法の創世記は、バッチタンクに1透析分の各成分の薬剤と水を入れ、溶解して使用する方式の重炭酸透析液であったが、炭酸塩の析出などの不安定なものであった。1960年代後半になると1剤化された酢酸透析液および多人数透析液供給装置が開発され、血液透析が広く普及する一因となった。その後、透析膜性能の向上とともに酢酸不耐症が問題となり、1980年代には2剤化された原液を用いる重炭酸透析液に再び移行したが、近年の透析膜高性能化、大面積化に伴い、pH調整用として用いる少量の酢酸が問題視され、クエン酸緩衝系の無酢酸重炭酸透析液が開発されている。
透析液は、医薬品である透析原液または同原粉末を、医療機器である透析液供給装置を用いて透析用水と混合することで適正濃度に作成し、透析用監視装置およびendotoxin retentive filter(以下、ETRF)を経由してダイアライザに供給される。透析液作成の流れにおいて、透析用水を作成する水処理装置、透析原粉末溶解装置およびETRFなどは、非常に重要な装置・機器にもかかわらず、医療機器としての許可を取得したものではない。しかしながら、これらの装置・機器は、透析液の清浄化および適正濃度を維持するために必要不可欠であるため、透析治療を安全に施行するためには、医療機器管理と同様に扱わなければならない。
透析液の濃度および清浄度は、透析装置の保守管理の結果を反映するものであり、透析液の作成に関わる装置・機器の安全管理体制の一環として重要である。
透析液濃度に異常が発生した場合、患者の生命に危険がおよぶ可能性がある。特に多人数用透析液供給装置を用いた場合は、多数の患者が被害を受ける危険性がある。
現在では、作成した透析液が逆濾過や直接血液に注入されるため、透析用水を含む透析液清浄化および適正な濃度の透析液を供給することが必須である。これは、血液透析業務に関わる臨床工学技士の責務であり、透析液の清浄化はもとより適正な濃度管理および各透析機器の保守管理を確実に行い、安全な透析治療環境の構築に努めなければならない。

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